所得税の予定納税「第2期」11月30日期限 個人経営の飲食店が知っておきたい納付と減額申請

「税務署から見慣れない封筒が届いたけれど、これは何の通知だろう」「今年は最低賃金の引き上げで人件費がかさんでいるのに、また税金を払うのか」——秋口にこうした不安を感じている個人経営の飲食店オーナーは少なくありません。

夏の繁忙期が一段落し、仕入や人件費の負担を実感し始めるこの時期、個人事業主に届く通知のひとつが「予定納税」の第2期分です。前年に一定の所得税を納めた方には、今年の所得税をあらかじめ前払いする仕組みが適用されており、納期限は11月30日に迫っています。

本記事では、飲食店経営者が知っておきたい予定納税の基本と、今年の利益が伸び悩んでいる場合に検討できる「減額申請」について、国税庁の公表情報をもとに整理します。

予定納税とは何か

予定納税とは、前年の所得金額や税額をもとに算出した一定額以上の所得税がある方について、その年の所得税の一部をあらかじめ前払いする制度です。国税庁のタックスアンサーでは、その年の5月15日時点で確定している前年分の所得金額や税額などをもとに計算した金額を「予定納税基準額」とし、この基準額が15万円以上になる方が対象になるとされています。

対象になる方には税務署から「予定納税額の通知書」が送付され、通常は基準額の3分の1にあたる金額を、第1期分(7月)・第2期分(11月)としてそれぞれ納付します。年間を通じて納めた予定納税額は、翌年の確定申告で計算した実際の税額から差し引いて精算する仕組みです。つまり、確定申告で追加の税額計算をする前に、見込みで先払いしておくイメージです。

第2期の納期限は11月30日

国税庁の案内によれば、第2期分の納付期間は11月1日から11月30日までとされています。納期限が土日祝日にあたる場合は翌開庁日が期限となるため、その年の実際の期限はカレンダーで確認するようにしてください。

納付方法は、口座振替・振替納税・クレジットカード納付・スマホアプリ納付・e-Taxによるダイレクト納付・金融機関や税務署の窓口など、確定申告時の所得税の納付と同じ手段が利用できます。振替納税を利用している場合は口座残高の確認も忘れずに行いましょう。

なお、個人事業税の第2期分の納期限も多くの都道府県で11月末に設定されており、時期が重なる点には注意が必要です。この点は当サイトの記事「個人事業税とは?飲食店業は第1種事業・税率5%、11月30日の第2期納付に注意」でも解説していますので、あわせてご確認ください。

予定納税基準額の計算で押さえておきたいポイント

予定納税基準額は、前年の所得金額や税額をベースに計算されますが、すべての所得がそのまま計算対象になるわけではありません。国税庁の案内によれば、店舗の売却や退職金などによる譲渡所得・山林所得・退職所得といった分離課税の所得は、原則として基準額の計算から除外されます(ただし上場株式等の配当所得は除外の対象外です)。

つまり、前年にたまたま設備の売却益や退職金収入があったために所得税額が大きくなっていた場合でも、その部分は予定納税の基準額には反映されない仕組みになっています。通知された金額に疑問がある場合は、前年の確定申告書の内容と照らし合わせて確認するとよいでしょう。

なお、今年新たに開業したばかりのオーナーは、前年分の申告納税額(予定納税基準額)がそもそも存在しないため、原則として今年は予定納税の対象になりません。予定納税は「前年の実績が一定額以上ある方」を対象にした制度だからです。

納付を忘れた場合に起こること

予定納税額は、通常の所得税と同様に納期限までに納付しないと延滞税が発生する対象になります。延滞税の割合は年によって見直されるため、本記事では具体的な税率には触れませんが、納期限を過ぎるほど負担が増えていく仕組みである点は変わりません。振替納税を利用している場合は、口座残高が不足していると振替ができず、結果的に延滞税の対象になることがあるため、11月30日が近づいたら口座残高を必ず確認してください。最新の延滞税の割合は、国税庁の案内で確認することをおすすめします。

よくある疑問

Q. 今年開業したばかりですが、通知は来ますか?
前年の申告納税額をもとに計算するため、開業初年度は原則として対象外です。通知が届くのは、前年分の確定申告(または前々年の実績)をもとに基準額が15万円以上と判定された方です。

Q. 減額申請をすれば必ず認められますか?
減額申請は、災害・事業状況の悪化など、所得が前年より明らかに減少する見込みがある場合に認められる制度です。単に「今月の売上が少なかった」という理由だけで自動的に認められるとは限らず、見込みの収支計算の根拠資料をもとに税務署が判断します。判断に迷う場合は、早めに税理士や所轄の税務署に相談することをおすすめします。

Q. 予定納税額をそのまま納めた場合、払いすぎになりませんか?
予定納税額は、翌年の確定申告で実際に計算した所得税額から差し引かれます。結果的に予定納税額の方が多ければ、その差額は還付されます。減額申請をせずに一旦納付しておくという判断も選択肢のひとつです。

飲食店経営で予定納税が「重く感じる」理由

個人経営の飲食店では、次のような事情から、予定納税の負担感が特に大きくなりやすい傾向があります。

  • 食材の仕入価格や酒類の仕入コストが上昇し、粗利率が前年より下がっている
  • 2026年10月からの最低賃金引き上げに合わせてアルバイト・パートの時給を改定し、人件費の割合が増えている
  • 夏場の繁忙期の売上を前提に前年の所得税額が計算されているが、今年は客足が想定ほど伸びていない
  • キャッシュレス決済の普及で手数料負担が増え、手元資金の余裕が薄くなっている

予定納税額は「前年の実績」をもとに機械的に計算されるため、今年の経営状況が前年より厳しい場合には、通知された金額をそのまま納めることが資金繰り上の負担になるケースがあります。特に人件費の増加については、当サイトの記事「最低賃金が2026年10月から引き上げ 全国加重平均1,177円、飲食店がアルバイトの時給・シフトを今すぐ見直すべき理由」もあわせて参考にしてください。

今年の利益が減っているなら「減額申請」を検討する

前年より所得が明らかに減る見込みがある場合には、予定納税額の減額を申請できる制度があります。国税庁の案内では、次のようなケースが減額申請の対象として挙げられています。

  • 災害や盗難などにより、その年の所得が前年より著しく減少する見込みがある場合
  • 事業の廃止など、経営状況の悪化がある場合
  • その年の課税標準額や税額が、前年と比べて明らかに減少する見込みがある場合

飲食店の場合、単純な「客足の減少」だけで自動的に認められるとは限りませんが、仕入コストや人件費の上昇によって利益が前年より明らかに落ち込む見込みがある場合は、税理士に相談のうえ検討する価値があります。

減額申請には提出期間が定められており、国税庁の案内によれば第2期分については11月1日から11月15日までとされています。申請書は所轄の税務署に提出する必要があり、見込みの収支計算の根拠となる資料(売上台帳や試算表など)をあわせて準備しておくとスムーズです。第1期分の申請期間(7月1日から7月15日まで)をすでに過ぎている場合でも、第2期分は改めて申請できる点は覚えておいてください。

予定納税・個人事業税・確定申告の関係を表で整理

項目 時期の目安 内容
予定納税 第1期 7月1日〜7月31日 予定納税基準額の3分の1を納付
予定納税 第1期分の減額申請 7月1日〜7月15日 前年より所得が明らかに減る見込みの場合に申請
予定納税 第2期 11月1日〜11月30日 予定納税基準額の3分の1を納付
予定納税 第2期分の減額申請 11月1日〜11月15日 前年より所得が明らかに減る見込みの場合に申請
個人事業税 第2期 多くの都道府県で11月末 都道府県税、飲食店業は第1種事業として税率5%が課される
確定申告(翌年) 2月16日頃〜3月15日頃 実際の所得税額から予定納税額を差し引いて精算

※申告・納付期限は年により変動し、土日祝日にあたる場合は翌開庁日になります。最新の期日は必ず国税庁・都道府県税事務所の案内で確認してください。

資金繰りの面で今からできる備え

予定納税の通知額をそのまま納められる資金があるかどうかは、日々の現金管理と密接に関わります。特に飲食店では次のような点を日頃から意識しておくと、急な納税負担にも対応しやすくなります。

  • 食材や酒類の棚卸を定期的に行い、在庫と粗利の状況を把握しておく
  • 事業用の口座と生活費の口座を分け、納税資金を先に取り分けておく
  • 経費として計上できるものとできないものを整理し、無駄な税負担を避ける

経費の判断に迷う場合は、当サイトの固定ページ「飲食店が経費にできるもの・できないもの一覧」もあわせてご確認ください。

まとめ

個人経営の飲食店オーナーにとって、予定納税は「前年の利益に対する後払い」のような感覚で捉えがちですが、実際には今年の所得税の一部を前払いする制度です。第2期分の納期限は11月30日で、個人事業税の第2期納付と時期が重なる点にも注意が必要です。

今年は食材原価や人件費の上昇で利益が前年より明らかに落ち込む見込みがある場合には、11月1日から11月15日までの減額申請を検討する余地があります。ただし、対象となるかどうかの判断には自店の数字を踏まえた確認が欠かせません。

この記事の内容でご不明な点や、自店のケースに当てはめた具体的な判断が必要な場合は、飲食店の確定申告ドットコム(道濟会計事務所)にご相談ください。

▶ サービス内容・料金:飲食店の確定申告ドットコム

▶ 経費の判断に迷ったら:飲食店が経費にできるもの・できないもの一覧

記事の内容は公開時点の情報に基づいています。税制は改正されることがあります。実際の判断は、最新の国税庁の案内をご確認いただくか、税理士にご相談ください。
「これは経費?」も、LINEでどうぞ。

レシートの写真1枚からでも大丈夫。相談は無料です。

\ 友だち追加は30秒 /
LINEで無料相談する