飲食店の「まかない」は経費か給与か?2026年4月改正で非課税ラインが7,500円に

「今日のまかない、余った野菜で炒め物でいい?」——仕込みの合間に従業員へまかないを出すのは、飲食店ではごく当たり前の光景です。ロス寸前の食材を有効活用でき、スタッフの満足度にもつながる。でも、この「当たり前」に税務上のルールがあることは、意外と知られていません。

「まかないって経費でいいんだよね?」「無料で食べさせてるけど、それって従業員の給与になるの?」というご相談は、飲食店の税務相談の中でも特に多い質問のひとつです。そして2026年4月、このまかないに関する非課税の基準額が42年ぶりに見直されました。

この記事では、個人経営の飲食店の店主さんが知っておきたい「まかない」の税務上の取扱いと、2026年4月の制度改正のポイントを、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。

まかないは「経費」か「給与」か——まず整理したい2つの視点

まかないをめぐる税務上の論点は、実は2つに分けて考える必要があります。

  • お店側の経費計上……まかないに使った食材費を「福利厚生費」や「まかない費」として経費に計上できるか
  • 従業員側の給与課税……従業員が無償または低額でまかないを受けたことが、従業員の「給与」として課税されるか

お店側の経費計上自体は、業務に関連する支出として基本的に認められます。問題になりやすいのは後者、つまり「まかないという名目で従業員に食事を提供したことが、実質的な給与にあたるかどうか」という点です。給与にあたると判断されると、お店側には源泉徴収の対象が増える、従業員側には所得税・社会保険の負担が増える、といった影響が出てきます。

非課税となる2つの要件(国税庁タックスアンサーNo.2594)

国税庁のタックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」では、役員や従業員に食事を支給した場合、次の2つの要件をどちらも満たしていれば給与として課税されない、とされています。

  • 要件1:従業員が食事の価額の50%以上を負担していること
  • 要件2:(食事の価額)-(従業員が負担している金額)が1か月あたり一定額(税抜)以下であること

ここで重要なのは、どちらか一方でも満たさない場合、「食事の価額から従業員負担額を差し引いた残額」が、その月の給与として課税される点です。基準額をわずかに超えた分だけが課税されるのではなく、要件を満たさない月は差額の全額が対象になるという理解が必要です。

2026年4月、非課税ラインが月3,500円から7,500円に

この要件2の基準額は、1984年(昭和59年)以来42年間、月3,500円のまま変わっていませんでした。しかしその間に外食費や食材価格は大きく上昇し、実態に合わなくなっていたことから、令和8年度の税制改正を経て、令和8年(2026年)4月1日以降、次のとおり引き上げられています。

改正前 改正後(2026年4月1日以降)
食事支給の非課税ライン(1か月あたり) 3,500円(税抜) 7,500円(税抜)
深夜勤務の夜食代(1回あたり) 300円(税抜) 650円(税抜)

基準額の判定は消費税・地方消費税を除いた金額で行い、10円未満の端数が生じたときは切り捨てて判定します。まかないを日常的に提供している飲食店にとっては、従業員負担を増やさずにまかないの内容を充実させられる余地が広がったとも言えます。

飲食店のまかないで具体的に計算してみる

実際にどのくらいの負担額なら非課税になるのか、飲食店を想定した例で確認してみましょう。あくまで基準額に対する当てはめのイメージであり、個々の店舗の状況によって判断が変わる可能性があるため、実際の運用は税理士や国税庁の最新の案内で確認してください。

ケース まかないの価額 従業員負担 要件1(50%以上負担) 1か月の店負担(20日換算) 判定
A店(定食メニューを提供) 1食500円 1食300円(60%) 満たす 4,000円 非課税(7,500円以下)
B店(まかない代を取っていない) 1食800円 1食0円(0%) 満たさない 16,000円 全額給与課税
C店(こだわりのまかないを提供) 1食1,200円 1食600円(50%) 満たす 13,200円(22日換算) 要件2を満たさず全額給与課税

C店のように、従業員負担が50%あっても、店負担の月合計が基準額を超えていれば非課税にならない点に注意が必要です。まかないの原価が上がりがちな高単価業態や、まかないの提供回数が多い店舗ほど、月ごとの店負担額を合計で管理しておく必要があります。

深夜営業の飲食店は「夜食代」の基準額アップにも注目

居酒屋やバーなど深夜営業を行う飲食店では、午後10時から翌午前5時までの勤務(深夜勤務)に対して支給する夜食についても、別枠の非課税基準があります。まかないの現物を用意できず、代わりに金銭を支給する場合、1回あたりの支給額が2026年4月1日以降は650円以下(改正前は300円以下、消費税等を除く)であれば非課税として扱われます。

閉店後にまかないを作る余裕がなく、深夜シフトのスタッフに「夜食代」として現金や電子マネーを渡している店舗は、この基準額も合わせて確認しておくとよいでしょう。

まかない代を「取る」べきか「無料」にすべきか

ここまでの内容を踏まえると、まかないを完全に無料で提供している店舗は要件1(50%以上負担)を満たせず、非課税の対象から外れてしまうことになります。一方で、たとえ少額でも従業員から食事の価額の50%以上を徴収していれば、店負担額が基準額以内である限り非課税を維持できます。

「身内のような従業員に食事代を取るのは気が引ける」という店主さんの声もよく聞きますが、税務上は「取っていない」ことがそのまま従業員の税負担・お店の源泉徴収事務の増加につながってしまいます。ワンコイン程度でも従業員負担を設定し、レジや専用の記録簿できちんと集金・記録しておくことが、結果的に従業員自身の税負担を抑えることにもなります。

よくある質問

Q. まかないを食べた人数や金額の記録は必須ですか

法律上、記録の形式そのものが明確に定められているわけではありませんが、非課税の要件を満たしていることを説明できるようにしておく必要があります。提供日・対象者・原価・徴収額を記録したシフト表や簡易台帳を用意し、月ごとに店負担額を集計できるようにしておくと、税務調査の際にも説明がしやすくなります。

Q. アルバイト・パートにまかないを出す場合も同じ基準ですか

正社員・アルバイト・パートといった雇用形態の違いによって、まかないの非課税に関する基準が変わるわけではありません。役員・使用人という枠組みで判断されるため、時給制のアルバイトであっても同じ2つの要件(50%以上負担・基準額以内)にもとづいて考えます。

Q. まかない代を給与から差し引いてもよいですか

給与から従業員負担分を差し引く運用自体は行われていますが、労働基準法上、賃金は原則として全額を支払う必要があり、賃金からの相殺・控除には協定や本人の同意など別の手続きが求められる場面があります。まかない代の徴収方法を給与差引にする場合は、就業規則や労働条件通知書への明記、本人の同意の確認など、労務面の手続きも合わせて整えておくことをおすすめします。

Q. 店主自身や家族(専従者)が食べるまかないも同じ扱いですか

従業員に対するまかないの非課税ルールは、雇用関係にある役員・使用人が対象です。店主自身や、事業に従事する家族(専従者)が食事をとる場合は、まかないの非課税ルールとは別に、食材を自家消費したものとして売上に計上する必要が生じる場合があります。当サイトの「飲食店が経費にできるもの・できないもの一覧」でも、この点を△(条件付き)として取り上げています。従業員向けのまかないと、店主・家族の食事は、区別して記録しておくと整理がしやすくなります。

記帳の一例:まかないの仕訳イメージ

実際の記帳イメージをつかむために、簡単な仕訳例を紹介します(税抜・簡略化した例です。実際の消費税区分や勘定科目は、使用している会計ソフトや税理士の指導に従ってください)。

場面 仕訳イメージ
食材を仕入れたとき 仕入高(または食材費) / 現金・買掛金
まかないを提供し、従業員から代金を受け取ったとき 現金 / 雑収入(またはまかない代預り金)
要件を満たさず給与課税になる月の差額 福利厚生費(店負担分)として区分し、超過分は給与として処理

まかないの原価そのものは仕入(食材費)の中に含まれているため、上記のように従業員からの徴収額を雑収入等で受け止める形にしておくと、月々の店負担額(=食事の価額-徴収額)を管理しやすくなります。

お店の実務対応:記帳と源泉徴収のポイント

制度の中身がわかったところで、実際の店舗運営でどう対応すればよいかを整理します。

  • まかないの提供実績を記録する……提供日・人数・原価・従業員からの徴収額がわかるよう、シフト表や簡単な記録表を残しておくと、月ごとの店負担額を集計しやすくなります。
  • 従業員負担の集金方法を決める……現金での徴収のほか、給与から一定額を差し引く方法を採る店舗もあります。給与から差し引く場合は、就業規則や労働条件通知書に明記し、本人の同意を得ておくことが望まれます。
  • 要件を満たさない月の扱い……50%負担の要件や基準額を満たさなかった月がある場合、その月の差額を給与に加算し、源泉徴収の対象に含める必要があります。まかない代を「なんとなく福利厚生費」で処理し続けると、税務調査で給与認定を受け、遡って源泉徴収漏れを指摘されるリスクがあります。
  • 消費税の仕入区分……まかないに使う食材の仕入れ自体は、通常の課税仕入れとして扱われるのが基本です。仕入れ・棚卸の管理や、消費税の区分に不安がある場合は、インボイス制度の経過措置に関する記事もあわせてご確認ください。

まかない以外にも、飲食店で経費として認められるもの・認められないものの全体像は、当サイトの「飲食店が経費にできるもの・できないもの一覧」で整理しています。まかないの項目も含めて一覧できますので、記帳の際の確認用にご活用ください。

まとめ

  • まかないは、従業員が食事の価額の50%以上を負担し、店側の負担額が1か月7,500円(税抜、2026年4月1日以降)以下であれば、給与として課税されない。
  • いずれかの要件を満たさない場合は、差額の全額がその月の給与として課税対象になる。
  • 2026年4月の改正で、非課税ラインは月3,500円→7,500円、深夜勤務の夜食代は1回300円→650円に、いずれも42年ぶりに引き上げられた。
  • 提供実績の記録、従業員負担の集金方法の明確化、基準を超えた月の給与加算・源泉徴収への反映を、日々の記帳に組み込んでおくことが実務上のポイントになる。
  • 基準額や取扱いは今後も見直される可能性があるため、最新の国税庁の案内で確認することが大切です。

この記事の内容でご不明な点や、自店のケースに当てはめた具体的な判断が必要な場合は、飲食店の確定申告ドットコム(道濟会計事務所)にご相談ください。

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▶ 経費の判断に迷ったら:飲食店が経費にできるもの・できないもの一覧

記事の内容は公開時点の情報に基づいています。税制は改正されることがあります。実際の判断は、最新の国税庁の案内をご確認いただくか、税理士にご相談ください。
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